3.研究系及び研究施設の現状
3-1 論文発表状況
3-1-1 論文の発表状況
分子研では毎年 A nnual R eview(英文)を発刊し,これに発表した全ての学術論文のリストを記載している。
論文の発表状況
間 期 象 対 集
編 ANNUALREVIEW 原著論文の数 総説等の数
∼1978.8. 1978 25 13 .
9 . 8 7 9
1 ∼1979.8. 1979 55 7 .
9 . 9 7 9
1 ∼1980.8. 1980 85 21 .
9 . 0 8 9
1 ∼1981.8. 1981 114 24 .
9 . 1 8 9
1 ∼1982.8. 1982 149 14 .
9 . 2 8 9
1 ∼1983.8. 1983 177 29 .
9 . 3 8 9
1 ∼1984.8. 1984 153 26 .
9 . 4 8 9
1 ∼1985.8. 1985 196 31 .
9 . 5 8 9
1 ∼1986.8. 1986 207 45 .
9 . 6 8 9
1 ∼1987.8. 1987 287 42 .
9 . 7 8 9
1 ∼1988.8. 1988 247 39 .
9 . 8 8 9
1 ∼1989.8. 1989 281 60 .
9 . 9 8 9
1 ∼1990.8. 1990 320 60 .
9 . 0 9 9
1 ∼1991.8. 1991 260 23 .
9 . 1 9 9
1 ∼1992.8. 1992 303 41 .
9 . 2 9 9
1 ∼1993.8. 1993 298 41 .
9 . 3 9 9
1 ∼1994.8. 1994 211 26 .
9 . 4 9 9
1 ∼1995.8. 1995 293 23 .
9 . 5 9 9
1 ∼1996.8. 1996 332 40 .
9 . 6 9 9
1 ∼1997.8. 1997 403 41 .
9 . 7 9 9
1 ∼1998.8. 1998 402 44 .
9 . 8 9 9
1 ∼1999.8. 1999 401 47 .
9 . 9 9 9
1 ∼2000.8. 2000 337 30 .
9 . 0 0 0
2 ∼2001.8. 2001 405 65 .
9 . 1 0 0
2 ∼2002.8. 2002 489 59
3-1-2 論文の引用状況
論文の引用状況については,昨年度の「分子研リポート2001」で初めて報告したが,1)その後新しいデータが得られたので,本 年度も続けて報告することにする。
論文の引用数については,米国 IS I 社(T he Insti tute for S ci enti fi c Informati on)2)の引用統計データベースの中の Nati onal C itation R eport (for J apan)(NC R )という,所謂「日本の論文」(著者の少なくとも1人が日本の研究機関に所属するもの)のデータ ベースに基づく調査が標準になりつつある。このデータベースに基づいた日本の研究機関の研究活動の順位付けの最近の結果 としては,例えば,文献3) ,4)などがある。他にも,引用頻度の高い順に200論文までで研究機関の順位付けをしたり,考察の対象 とする学術雑誌をNatureやScienceなどの英国や米国の知名度の高い雑誌だけに限るような評価など,様々な順位付けがなされ ている。しかし,我々は,前回,文献3),4)の考察が欧米の雑誌も日本の英文誌も同等に扱うとともに,できるだけ多くの論文を対象 としていて,統計的にも信頼性・客観性が高いものになっていると主張した。1)ここで,もう一度文献3)の内容について簡単にまと めることにする。
文献3)では,1981年1月から1997年6月までの16年半の間に,ISI社が厳選した雑誌(原則的に英文誌で,数は約6,400,そのう ち自然科学分野では約 3,600)に発表された,853,323 件の「日本の論文」のうち,文献種別が article,note,proceedingsである, 737,039件の論文を調査対象としている。そして,文献3)では,これらの論文の所属機関を大学・企業・その他の3つのセクターに 分類した。ここで,「大学セクター」は4年制大学,大学院大学,大学共同利用機関,短期大学,高等専門学校,高等学校などの教 育機関を含む(特に,532大学と17の大学共同利用機関が含まれている)。また,「その他セクター」は,基本的に旧文部省以外の 官公セクターであり,国公立試験研究機関,特殊法人・財団法人の研究所や大学付属病院以外の病院,その他の公的団体等が 含まれる。文献3)では,特に大学セクターの論文589,472件の調査結果を中心に紹介している。研究機関の研究活動の評価は何
表1日本の大学等の分野別論文引用度 表2 日本の大学等の分野別論文引用度 分野:化学(1981―1997) 分野:物理学(1981―1997) 位
順 大 学 等 論文引用度 順 位 大 学 等 論文引用度 1 岡崎国立共同研究機構 15.1 1 岡崎国立共同研究機構 11.1 2 京都大学 10.6 2 東京大学 10.5 3 東京大学 10.2 3 高エネルギー物理学研究所 9.8 4 名古屋大学 10.0 4 京都大学,筑波大学 8.7 5 大阪大学 9.4 6 東北大学 8.0 6 東京工業大学 9.3 7 東京工業大学,新潟大学 7.7 7 大阪市立大学 9.2 9 大阪大学,神戸大学,広島大学 7.6 8 九州大学,東京薬科大学 8.6 12 名古屋大学 7.2 0
1 東北大学,北海道大学 8.4 13 東京農工大学 6.9 2
1 東京都立大学 8.2 14 九州大学 6.8 3
1 広島大学 8.1 15 東京都立大学 6.7 4
1 早稲田大学 7.7 5
1 金沢大学,慶應義塾大学 7.6
を元にするかは,議論の余地があるが,文献3)では,研究機関毎の「論文数」と「引用度」(論文1報当たりの平均被引用回数)を 採用した。しかし,論文数は研究者の数に強く依存する量なので,あまり良い指標とは言えない。一方,後者の引用度は,論文が 他の研究者にどれぐらい影響を与えたかを示すものであり,「論文の質を示す(完璧とは言えないまでも)最も客観的で厳密な指 標」と言うことができるであろう。
文献3)では,理工系,生物・医学系,人文・社会系の3系26分野について,引用度の詳しい解析を行っているが,分子研に関係 する化学と物理学の分野における15位までの結果を表1と表2にまとめた。ここでは,それぞれの分野において,論文数上位30機 関の論文引用度をランク付けしている(文献3)の表4がそうしているからである)。化学では分子研が圧倒的に全国第1位,物理 学でも僅差で第1位であることが判明した。
さて,同様の解析について,今年度得られた新しいデータについて述べることにする。一つ目はIS I社の日本支社が発表した ホームページの資料5)である。そこでは,1991年1月から2001年12月までの11年間に発表された論文のISI社のデータベース中の 論文の総引用数を元に日本のトップ10機関をランク付けしている。このホームページの表では,総引用数のほかに,総論文数と論 文1報あたりの平均被引用数(引用度)も掲載されている。上でも述べたように,総論分数は研究機関の研究者の数に強く依存す るので,ランク付けの指標としては問題がある。ここでランク付けに使用されている総引用数も研究の質をある程度反映はしてい るが,やはり,研究者の数に依存している量なので,良い指標とはいえない。よって,ここでも引用度によるランク付けを表3にまと めた。調査対象としている期間が新しくなったので,表1の結果から順位が大きく入れ替わっているが,分子研に関しては第1位の 地位を守っていることが判明した。特に,分子研が2位に2.4ポイントの差をつけているの対し,2位から10位までの間に1.69ポイン トの差しかないことに注目されたい。以下にも見るように,物理学の分野においても分子研は引用度において上位にランクされて いるが,文献5)の資料では,まず,総引用数がトップ10の研究機関までで「足切り」しているので,研究者の数が大きな大学に比べ て少ない分子研は考慮からはずれている(それにもかかわらず,化学の分野では引用度の圧倒的な高さによって研究者の数の 少なさをカバーして,ランクインしたということもできる)。
今年度得られた新しいデータの二つ目は根岸氏による文献3),4)の続編というべき資料6)である。今回は1990年から1999年ま での10年間のIS I社の「日本の論文」60万件についての解析である。ここでは,新たに引用度指数という量が導入された。分野別
位
順 大 学 等 論文引用度 1 分子科学研究所 11.55 2 東京大学 9.15 3 北海道大学 9.05 4 京都大学 8.59 5 名古屋大学 8.57 6 九州大学,東京理科大学 8.16 8 大阪大学 7.84 9 東京工業大学 7.75 0
1 東北大学 7.46 表3 日本の大学等の分野別論文引用度
分野:化学(1991―2001)
の各研究機関の引用度指数は以下で定義される。
Ia,i= Xa,i X a
× 100 (1)
ここで,分野aにおける研究機関iの引用度Xa,iは,研究機関iから出ている分野aにおける論文の総引用数xa,iを総論文数na,iで 割って,
Xa,i= xa,i
na,i (2)
で定義される。また,式(1)の分母は,分野aにおける平均引用度で,分野aにおける総引用数xaを総論文数naで割って次で与え られる。
X a=nxa a
(3)
式(1)から分かるように,引用度指数が100の研究機関は,その分野で我が国で平均的な引用度の論文を出しており,200ならば 平均の2倍の引用度になっている。
6)
考慮する研究機関は,引用数合計の上位50位以内の研究機関(但し,論文数が10件以上) としている。前回
3),4)
では,それぞれの分野において,論文数上位30機関を対象としたので,足切りの規準が変わったことに注意 されたい。
引用度指数による化学と物理学における分野別ランク付けを表4と表5にまとめた。
6)
化学では分子研が圧倒的に全国第1位, 物理学では第3位であることが判明した。また,表4では総研大が2位に順位付けられているが,これは,主に分子研から出ている
表4日本の大学等の分野別論文引用度指数 表5 日本の大学等の分野別論文引用度指数 分野:化学(1990―1999) 分野:物理学(1990―1999)
位
順 大 学 等 引用度指数 順 位 大 学 等 引用度指数 1 岡崎国立共同研究機構 222 1 名城大学 246 2 総合研究大学院大学 142 2 三重大学 194 3 姫路工業大学 139 3 岡崎国立共同研究機構 192 4 豊橋技術科学大学,三重大学 129 4 高エネルギー加速器研究機構 166 6 東京大学 128 5 東京大学 148 7 京都薬科大学 127 6 神戸大学 138 8 京都大学,北海道大学 124 7 新潟大学 131 0
1 名古屋大学 123 8 青山学院大学 130 1
1 東京都立大学 117 9 東海大学,山梨大学 127 2
1 大阪大学,東京薬科大学 114 11 京都大学 121 4
1 九州大学,東京工業大学, 12 筑波大学 119 学
大 学 科 術 技 岡
長 113 13 広島大学 116
4
1 東京農工大学,名古屋大学 115
論文のうち,総研大の所属も同時に書かれているものが寄与したものであると思われる。総研大の基盤研究機関の中で化学関 係の論文を多く出している所が分子研だけであるからである。ちなみに,1位と2位の数値に隔たりがあるということは,分子研か ら出ている論文に総研大の所属も書かれていないものが相当数あることを示唆している(総研大の併任教官は全ての論文に総
研大の所属も入れるべきではないか!)。
表3と表4を比べると表3の方が大きな大学だけがランクインしているのに対し,表4では比較的小さな大学もランクインしている ことが分かる。足切りの規準の違いによってランクインできる大学に大きな違いが出てくることは,このような順位付けをするときに おいて常に忘れてはならない留意事項である。
(分子基礎理論第一研究部門 岡本祐幸 記)
参考文献
1) 分子研リポート2001, pp. 62–66. 2) http://www.isinet.com/
3) 根岸正光、孫媛、山下泰弘、西澤正巳、柿沼澄男, 「我が国の大学の論文数と引用数―ISI引用統計データベースによる統 計調査」, 学術月報 Vol. 53, No. 3, 258 (2000).
4) 根岸正光、山崎茂明(編著), 「研究評価」, 丸善 (2001). 5) http://www.isinet.com/japan/news/20020325b.html
6) 根岸正光 , 「大学ランキング 2003」, 朝日新聞社 , pp. 134–141 (2002).